Jun 17, 2026
BSI(英国規格協会)、従業員の健康・ウェルビーイングと生産性の関係について調査を実施 安心して相談できる職場づくりが、日本企業の生産性向上の鍵に
本プレスリリースは2026年6月16日(英国時間)に英国で配信されたプレスリリースの抄訳版です。
2026年6月16日:英国規格協会(British Standards Institution、以下「BSI」)が委託した新たな調査で、従業員が安心して健康やウェルビーイングについて相談できる、風通しのよい信頼ある職場づくりが、日本企業の生産性向上につながる可能性が示されています。
● 休まない職場に潜む、見えない生産性損失
● 諦めや無力感が、労働者の相談・支援利用を阻害
● 従業員支援制度はあるが、活用は低水準
● メンタルヘルスの課題が、キャリア形成や人材定着に影響
経済ビジネスリサーチセンターが実施し、BSIのレポート『信頼の文化を築くことの価値:職場における健康・ウェルビーイング支援が生産性に与える影響の考察』で発表された本調査では、信頼の文化が根付いている組織、すなわち、身体の健康やメンタルヘルス、ニューロダイバーシティ、さらには更年期や月経などライフステージに伴うニーズなど、自身の健康課題について、従業員が安心して相談できると感じられる組織では、生産性や従業員定着の面で測定可能な向上が見られることが明らかになりました。
本調査は、多くの組織が生産性向上の機会を見過ごしていることを示唆しています。従業員が健康上の課題を抱えながらも働き続け、利用可能な支援を必ずしも活用できていない可能性があります。長期休暇や病欠などによる欠勤率が低いことは、一見すると従業員の健康状態が良好であるように見える一方で、実際には勤務中のパフォーマンス低下を覆い隠している可能性があります。こうした結果は、職場において健康やウェルビーイングについてオープンに話し合うことの重要性を示しています。
職場環境の改善や従業員の状況に応じた調整には、初期費用が伴う場合がありますが、今回の調査ではこうした支援が長期的に大きなリターンをもたらす可能性を示しています。これは、特に日本にとって大きな生産性向上の機会となります。労働年齢人口が減少する日本では、高齢化が進む中で生活水準と経済成長を維持するために、さらなる生産性向上が求められています(※1)。

従業員の健康・ウェルビーイングと生産性の関係について
本調査結果によると、日本の従業員は、健康やウェルビーイングに関する課題について、雇用主に相談できるという自信が、調査対象国の中で最も低い水準にあることが明らかになりました。メンタルヘルスについて相談できると回答した人はわずか24%で、身体の健康問題については42%にとどまりました。同様に、メンタルヘルスについて、解決策を見つけるために雇用主が支援してくれると自信を持っている日本の労働者は5人に1人(20%)に過ぎず、身体の健康問題については38%でした。こうした結果は、職場における心理的安全性やウェルビーイングへの取り組みの重要性を示しています。
日本では、職場支援への信頼感、つまり健康上の課題について相談し、必要な支援を受けられるという自信が、他国とは異なる形で従業員の行動に影響していることが明らかになりました。具体的には、健康上の理由による休暇取得よりも、プレゼンティーイズム(体調不良を抱えながら出勤すること)に強く影響しています。この自信の低い従業員は、休暇取得の回数が少なく、休暇日数も短い傾向にあります。一方で、自信のある従業員は、必要に応じて休暇を取得する傾向が高く、休暇日数も大幅に増加しています。特にメンタルヘルスに課題を抱えている従業員では、職場支援への自信がある人と低い人の間で、平均で22.2日の差が見られました。
同時に、自信の低い従業員ほど、休暇を取る代わりに、プレゼンティーイズムで対応しようとする傾向があることも示されています。メンタルヘルスの不調についてみると、体調不良を抱えながら働く割合は、自信のある従業員では53.1%であるのに対し、自信のない従業員では77.3%に達し、約24ポイント高くなっています。
BSIのGlobal Head of Human and Social SustainabilityであるKate Fieldは次のように述べています。
「職場におけるウェルビーイングは、信頼の文化から始まります。従業員が健康上の課題に直面しているとき、雇用主にもできることはあります。従業員を支援し、組織のパフォーマンスとレジリエンスを維持するために、雇用主が実行できる、簡単でありながら意義のある取り組みは少なくありません。本調査結果は、信頼が十分に醸成されておらず、支援を利用しにくいと感じられる職場では、従業員の健康上の課題が深刻化し、休職や病欠につながる可能性が高まることを示しています。誰もが、身体の健康またはメンタルヘルスの調子が万全ではない時期を経験することがあります。そうした時に、雇用主からどのような支援を受けられるかは、個人に大きな影響を与えます。
回復のための時間を確保することや、従業員が働き続けられるよう働き方を調整するといった取り組みは、個人だけでなく、組織の成功や社会全体にも良い影響をもたらします」
重要なことは、単に支援体制が存在するかどうかではなく、それが従業員に認知され、信頼され、実際に利用されているかどうかです。多くの組織がウェルビーイングに関する枠組みを整備している一方で、職場のウェルネス基準について「よく知っている」と回答した従業員はわずか15%にとどまりました。また、これらの基準に価値があると感じている従業員は39%に過ぎませんでした。さらに、30%の従業員は、メンタルヘルスに関するニーズを支援するための合理的な職場環境の調整について、雇用主は対応に消極的であると考えています。これは、制度が整備されていても、従業員が利用しやすいと感じているとは限らないという明確なギャップを示しています。
支援に対する情報が十分に伝わっていないことも、問題をさらに複雑にしています。メンタルヘルスやウェルビーイングについて、雇用主が定期的に情報発信していると回答した従業員はわずか33%にとどまりました。このことが、支援の内容が見えにくく、実際に活用しにくいという認識を強めています。また、こうした状況は、一部の労働者の間で、「相談しても変わらない」という深い諦めの感覚につながっている可能性があります。従業員が、支援を求めても状況の改善にはつながらないと考え、自身のウェルビーイングを改善するための取り組みから距離を置いてしまうためです。
こうした傾向は、特に建築・不動産関連分野で顕著に見られます。同分野では雇用主への信頼度によるギャップが最も大きく、職場支援への信頼感が低い従業員では、プレゼンティーイズムの割合が約60%から88%近くまで上昇しています。これは、プロジェクトのスケジュールや納期に関するプレッシャーが影響している可能性があります。
調査結果は、日本における生産性損失の主な要因が、長期休暇や病欠などによる欠勤ではなく、プレゼンティーイズムであることを裏付けています。こうした欠勤率の低さは、従業員の健康状態が良好であることを示すものではありません。むしろ、生産性損失は勤務中のパフォーマンス低下という形で見えにくくなっています。そのため、従来の欠勤指標だけでは、実際の経済的影響が大幅に過小評価される可能性があります。
また、本調査では、メンタルヘルスの課題が従業員のエンゲージメント、人材定着、キャリア形成に影響を及ぼしていることも明らかになりました。約22%が仕事へのモチベーション低下を、34%が自身の業務遂行能力に対する自信の低下、31%がキャリア上の意欲への影響を挙げています。特に、64%がメンタルヘルスの課題によって、退職または長期休暇につながったと回答しており、人材定着と組織の成長に対する影響を浮き彫りにしています。
一方で、全体的な離職率は、職場支援への信頼感の高さによって大きく変わらないことも示されています。これは、健康上の課題が続いている場合でも、転職や離職といった行動に移りにくい、構造的または文化的な制約がある可能性を示しています。
BSIジャパンのマネージング・ディレクターである根本 英雄は次のように述べています。
「長期休暇や病欠などによる欠勤率の低さは、従業員が健康であるという印象を与える可能性があります。しかし実際には、生産性の損失は日々の業務パフォーマンスの低下という形で見えにくくなっており、企業にとって隠れた生産性の課題となっています。日本企業は、欠勤に関する指標だけを見るのではなく、従業員が安心して支援を求めることができ、それが状況の改善につながると信じられる信頼の文化を構築する必要があります。これは、日本の生産性ギャップを解消し、労働力のレジリエンスを強化するうえで不可欠です」
経済ビジネスリサーチセンターのシニアエコノミストであるLiam Daly氏は次のように述べています。
「本分析では、従業員が健康上の課題について雇用主に安心して相談できると感じている場合、組織の成長機会につながることが示されています。 重要なのは、これにより雇用主の役割が、単に義務として対応するものから、組織が主体的に取り組む機会へと捉え直される点です。信頼とオープンさのある文化を醸成することは、具体的かつ実現可能な目標です。規格に基づく支援策が充実している職場では、健康やウェルビーイングに関する課題を抱える従業員による長期休暇や病欠の取得が、一貫して少ない傾向が見られます。健康、安全、ウェルビーイングに関する規格は、組織が単なる善意にとどまらず、従業員の真の信頼感を築くための行動、仕組み、説明責任を職場に組み込むための実践的な枠組みを提供します」
英国の国家標準化機関であるBSIは、健康やウェルビーイングの課題を抱える従業員を組織がより適切に支援できるよう、明確で実践的なガイダンスを提供しています。これらの規格の導入は、従業員の信頼を高めるとともに、組織の準備状況とコミットメントを示し、信頼に基づくオープンな文化の醸成に寄与します。
関連する規格として、労働安全衛生マネジメントシステムに関するISO 45001(※2)や、職場における心理的健康・安全に関するISO 45003(※3)などがあり、心理的安全性の高い職場環境づくりを支える枠組みとしても活用できます。
※1: https://www.oecd.org/en/topics/sub-issues/economic-surveys/Japan-economic-snapshot.html
※2: https://www.bsigroup.com/ja-JP/products-and-services/standards/iso-45001-occupational-health-and-safety/
※3: https://www.bsigroup.com/ja-JP/products-and-services/standards/iso-45003-psychological-health-and-safety-at-work/
■調査について
本調査は2026年2月に経済ビジネスリサーチセンターによって実施されました。日本における独自調査に基づくもので、過去5年以内に特定の課題を経験したと回答した個人を対象としています。
日本では1,008人が調査対象となり、404人がメンタルヘルス上の課題、604人が身体の健康上の課題を挙げ、月経や更年期に関する課題を挙げた人は0人、神経多様性を持つと回答した人も0人でした。回答者は、建設・環境、医療、ホスピタリティ、小売・卸売の4つの経済セクターから選出されました。
本調査は、以下の3つのモジュールで構成されています。
1. 職場が健康・ウェルビーイングに関する課題に対応し、支援を提供する準備状況の評価
2. 従業員が健康・ウェルビーイングに関する課題について雇用主に相談できるという自信、解決策を得られるという自信、および職場全体の生産性との関係の検証
3. 職場における規格・標準に基づく施策の価値および利用可能性に関する検討
■BSI(英国規格協会)とBSIグループジャパンについて
BSI(British Standards Institution:英国規格協会)は、世界中で研修、保証、認証、アドバイザリーサービスなどを提供するグローバルな専門機関です。世界で74,500社以上のお客様と連携し、あらゆる重要社会課題に取り組み、信頼を構築することで、より安全で、より安心でき、より持続可能な世界の実現を目指しています。
英国において、BSIは政府から国家標準化機関に指定されています。この役割において、幅広い産業分野におけるベストプラクティスの形成に重要な役割を果たしています。約13,000名の委員会メンバーが、国際貿易の基盤となる規格策定に貢献し、組織が新たな市場に参入するだけでなく、イノベーションを加速させることを支援しています。
125年にわたり、私たちは「進歩は、安全で、一貫性があり、信頼できるものであって初めて機能する」というシンプルな信念のもと、優れた意図を信頼できる成果へと転換し、社会にポジティブな影響をもたらしてきました。1901年の鉄道用レール規格の標準化から、ヘルメット安全規格による社会の保護、AIガバナンスの先導、ネットゼロ実現のための統一フレームワークの策定に至るまで、BSIは社会と産業のあらゆる分野で活動し、パフォーマンスの向上、リスクの低減、持続可能な成長の推進に取り組んでいます。
規格とは、共有されたベストプラクティスを体系化し、共通言語を提供する、任意で活用できる実践的なツールです。BSIは、産業界、政府、消費者、学術界にまたがる比類のない専門知識を結集し、協働と合意形成を通じて規格を開発しています。また、保証、認証、研修、知見の提供を通じて、組織がベストプラクティスを導入および定着できるよう支援し、合意に基づくベストプラクティスを測定可能な成果へとつなげています。BSIは商業的に事業を展開する一方で、公益に資するという使命に基づき、その実現に向けて再投資を行っています。
創立125周年を迎えるBSIは、新興技術、新たなリスク、変化する社会の期待に応えるべく、その活動を進化させ続けています。
BSIは英国政府により国家標準化機関に指定されており、国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)、欧州標準化機関(CEN、CENELEC、ETSI)において英国の利益を代表しています。
BSIグループジャパンは、1999年に設立されたBSIの日本法人です。マネジメントシステム、情報セキュリティサービス、医療機器の認証サービス、製品試験・製品認証サービスおよび研修サービスの提供を主業務とし、また規格開発のサポートを含め規格に関する幅広いサービスを提供しています。
URL: https://www.bsigroup.com/ja-JP/
■経済ビジネスリサーチセンターについて
経済ビジネスリサーチセンター(Centre for Economics and Business Research)は、独立系の経済コンサルティング会社であり、戦略的な意思決定に資する厳密かつ証拠に基づいたインサイトを提供することで知られています。1992年に設立された経済ビジネスリサーチセンターは、経済予測、経済効果分析、政策調査を専門としており、民間・公共部門を問わず、英国およびグローバルの主要組織と連携しています。顧客には、多国籍企業、金融機関、政府機関、業界団体などが含まれます。詳細については、 https://www.cebr.com をご覧ください。





