Mar 01, 2025
【3月におすすめの本】春の訪れとともに楽しみたい本を編集部が厳選

穏やかな春の日差しが気持ちいい3月は、読書を楽しむ絶好の時期。卒業や旅立ちの季節だからこそ、別れや出会いを描いた作品や心を生かしてくれる物語には、より一層心が動かされますよね。
この記事では、春の訪れを感じさせる心温まる小説から、新たな一歩を踏み出す勇気をくれる物語、人生について考えさせられる作品まで、3月にぴったりの本をピックアップ。新しい季節の始まりに、ぜひ心に残る一冊を見つけてみてくださいね。
編集部厳選!3月におすすめの本7選
3月は卒業や新生活への準備など、人生の節目を迎える人が多い季節。気持ちが揺れるこの時期だからこそ、読書で気持ちを整えたいものです。ここでは、3月におすすめの本を7冊ご紹介します。
読み終わりの余韻を楽しんで「三月は深き紅の淵を」恩田 陸

3月といえばぱっと思い浮かべるのがこの一冊。新しい季節を前にゆっくりと読んでほしい作品です。
謎の本をめぐる、珠玉のミステリー4篇を収録。第一部の主人公・鮫島巧一は読書が趣味の会社員。ある日、会社の会長から趣味が読書という理由で別宅に招かれます。2泊3日の滞在中、鮫島が聞かされたのは、確かに屋敷内にあるはずなのに、10年以上誰も見つけられていない「三月は深き紅の淵を」という不思議な本の話でした。たった1人に1晩だけ貸すことが許されるという、幻の本。ほかの招待客たちと同じく、鮫島も「一体どんな本なのだろう」と興味を持ち始めますが——。
視点や作調が異なる4編を通して、幻の本の謎を追いかけるミステリアスな物語。ホラー要素もありつつ、思わず引き込まれる展開が魅力です。謎の本「三月は深き紅の淵を」は存在するのか?作者は誰なのか?ミステリーやホラー好きはもちろん、風変わりな小説が好きな方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
ハチミツがもたらす幸せの味とは「今日のハチミツ、あしたの私」寺地 はるな

3月8日は語呂合わせで「みつばちの日」。ハチミツは甘くて美味しいだけでなく、栄養価が高く身体にも良いとされています。樹木や草花など花が咲くだけ種類があるとされていて、知れば知るほどハチミツって奥が深いんです。そんなハチミツを扱う養蜂家たちが登場する作品がこちら。
「明日なんて来なければいい」中学生の少女・碧(みどり)は、同級生からのいじめや両親との関係に悩み、辛い日々を過ごしていました。そんなある日、食事ものどを通らず、ガリガリに痩せてしまった碧は、見知らぬ女性から「ハチミツをもうひと匙足せば、あなたの明日は今日より良くなる」という言葉と共に、小さなハチミツの瓶をもらいます。
それから19年後、30歳になった碧は、恋人・安西の故郷で蜂蜜園の手伝いをすることに。どこか幼く頼りない安西、厳しくも温かい養蜂家とその娘、人生経験豊富なスナックのママとの出会いを通して、碧の心は少しずつ変化し——。
人とのつながりの大切さや人生とは何か、について考えさせられる一冊。ハチミツとの出会いが主人公の心を癒し、徐々に前向きな気持ちを取り戻していく様子からは、未来への希望がひしひしと感じられます。
なんでもない日でも特別な気持ちになれる「ショートケーキ。」坂木 司

3月9日は「ケーキ記念日」。人口あたりのケーキ屋の数が多いことから、自由が丘や神戸とともに「日本三大ケーキのまち」といわれているのが長野県佐久(さく)市。この佐久市のケーキ職人たちがケーキの魅力を広めたい想いで制定したそうです。そんなケーキの定番、ショートケーキの魅力が堪能できる作品がこちら。
誰もがひとつやふたつ思い出がある「ショートケーキ」をめぐる、甘くて少し酸っぱい5つの連作集。表題作「ショートケーキ。」の舞台は、駅ビルのケーキ屋。ここでは、ともすれば売れ残りそうなホールケーキを予約なしで買ってくれるお客さんを「天使」と呼んでいます。天使の中には常連客もいて、その中の女子大生と思しき2人組は丸いホールケーキにこだわりがあるようで——。
ショートケーキをキーアイテムにした、ほんわか癒される短編集。登場人物が少しずつ絡んでいて、幸せな雰囲気が全体に漂っています。「なんだか心が疲れている」「優しい気持ちになりたい」そんな人にこそ読んでほしい作品です。
あの頃の自分を振り返る「少女は卒業しない」朝井リョウ

3月といえば別れの季節。新しい季節の始まりに期待するワクワク感と、これまでの環境を手放すことになる寂しさが入り混じって、どこかそわそわしてしまう・・・そんな気持ちを誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。学生時代の記憶がよみがえってくる、かもしれない一冊がこちら。
舞台は、今年度で廃校が決まっている山梨県の高校。思い出の詰まった校舎はもうすぐ取り壊され、3年生は明後日に卒業式を控えています。断ち切れない思いを抱える少女、進路の違いで離ればなれになる彼氏に気持ちを伝えたい少女、中学の頃から片思いをしている同級生に告白しようと決めている少女、そして、ひそかに先生に憧れを抱いている少女。それぞれの「さよなら」と向き合い、さまざまな方法で想いを形にしようとする少女たち。
誰もが経験する「卒業」という特別な時間の中で、大切な人との別れや一歩を踏み出す勇気に揺れ動く少女たちの繊細な感情が描かれた作品です。ミステリー的な仕掛けもあり、青春を追体験したい人はもちろん、謎解きが好きな人にもおすすめです。
ほろ苦い大人の恋愛「水曜の朝、午前三時」蓮見 圭一

3月15日は1970年の大阪万博にちなんで「万国博デー」です。2025年の大阪・関西万博開催までもう間もなくですが、かつての万博を振り返ってみるのはいかがでしょうか。当時を知らない人でも、1970年の大阪万博がどんな雰囲気だったのか味わえる、そんな作品がこちら。
主人公の義母は、45歳の若さで亡くなった翻訳家&詩人の四条直美。直美は亡くなる前に、ニューヨークに留学中の娘・葉子に向けて、自分の人生を語ったテープを4巻残していて、主人公はそのテープの内容を書き起こすことになります。
とくに大きく語られたのは、義母・直美が大阪万博でホステスとして働いていたころの出来事。将来を期待されていたエリート学生・臼井との情熱的な恋を語りながら、直美は何度も「もしあの時、あの人との人生を選んでいたら…」と何度も後悔の念を口にします——。
一人の女性の人生を通して、愛の喜びと悲しみ、人生の選択について深く考えさせられる作品。自責の念を抱きながらも心のままに生きようとする直美の姿は、読むほどに心を強く揺さぶります。
※現在版元は品切れ・電子版配信中
生命をいただくこととは「ブタとともに」山地としてる

3月1日は「ブタの日」。日本ではなじみがないですが、アメリカでは「National Pig Day」として1972年から続く記念日なのだとか。この日は、食料をはじめとして様々な場面で人間の役に立っているブタへ感謝するべきだとして、様々なイベントが催されるようです。ブタへの感謝の気持ちを考えさせられる一冊がこちら。
香川県の小さな町で養豚場を営む「お父さん」と、1200頭の豚との日々をつづった写真絵本。「ブタは人に食べられるために生まれてきよる。 やからこそ、絶対に粗末に扱ったらいかん」「愛情をもって育てられたブタは、おいしいと思ってもらえる豚肉になる」という信念のもと、お父さんはブタを我が子のように大切に可愛がります。お父さんのお腹の上で安心しきって眠る子ブタたちは、瀬戸内海に面した養豚場で半年暮らした後、食肉として市場に送られる運命…。命をいただくとはどういうことなのか、お父さんとブタたちの触れ合いを通して、命の尊さや生きることの意味を考えさせられる作品です。
ブタたちの可愛らしい姿に癒されながらも、彼らはやがて食肉となる運命にあるという現実も描かれた一冊。命をいただくことの良し悪しは語られておらず、ただ「お父さん」とブタの様子が、写真と共にリアルに描き出されています。
ぼーっとする時間も大事「フレデリック」レオ=レオニ

3月2日は語呂合わせで「ミニチュアの日」。ということで小さな生き物、ねずみが主人公となっている作品がこちら。
ある牧場の石垣の中に、5匹のおしゃべりな野ねずみたちが暮らしていました。冬が近づき、野ねずみたちは冬を越すための食料を一生懸命集めます。ところが、フレデリックという野ねずみだけはなにもせずぼんやりしています。
「フレデリック、どうして君は働かないの?」ほかの野ねずみたちがそう聞くと、フレデリックは「こう見えたって働いてるよ。寒くて暗い冬の日のために、僕はお日様の光を集めているんだ」と答えました。やがて冬を迎え、野ねずみたちは隠れ家にこもります。しだいに集めていた食料も底をつき、寒さでみんなの元気がなくなってきて——。
目に見えるものだけでなく、心を豊かにすることの大切さを教えてくれる絵本。一見怠けているように見えるフレデリックの行動を通して、創造力の大切さや心を満たすものの重要性に気づかされます。
3月におすすめの読書法3選
春の訪れを感じる3月は、外で読書を楽しむのにぴったりの季節です。いつもと違った環境で読書をすれば、新鮮な気持ちで物語に没頭できるかも。ここでは、3月の読書をもっと楽しめるおすすめの読書法を3つ紹介します。
梅の花を愛でながら読書
公園や庭園に咲く梅の花を眺めながら、本を読んでみるのはいかがでしょうか。暖かい日差しの下で、花の香りや鳥のさえずりを感じながらページをめくる時間は、心を穏やかにしてくれます。ベンチに座ってゆっくり読むのはもちろん、レジャーシートを広げてくつろぎながらの読書もおすすめですよ。
青春18きっぷで電車旅を楽しみながら読書
のんびりと電車に揺られながら本を読むのも、旅情を感じられる贅沢な時間。特にローカル線はゆったりと流れるのどかな空気感があり、車窓から広がる風景を楽しみながら、心ゆくまで読書に没頭したいときにおすすめです。特に、旅や出会いをテーマにした本を読むと、移動時間がより特別に感じられますね。
飛行機の離陸を眺めながら読書
空港の展望デッキやカフェで、飛行機の離着陸を眺めながら読書をするのも一興です。飛行機の旅立ちを見送りながら別れや新たな門出を描いた作品を読めば、より深く物語に共感できること間違いなし。空港の活気ある雰囲気の中で静かに本に没頭して、特別な読書時間を過ごしましょう。
おわりに
3月は、新たな門出や別れが増える節目の季節。そんな時こそ本の世界に触れ、自分の気持ちを整理して前へ進むためのヒントを探してみてはいかがでしょうか。ぜひ今回ご紹介した読書の楽しみ方を参考に、新たな読書の世界へ足を踏み入れてみてくださいね。

sachikawa
wabライター・アシスタントディレクター。自分らしく暮らしたい大人女子に役立つ情報をお届けします♪