Oct 19, 2025
【医師監修】スリープツーリズムとは?意味・効果と国内おすすめ施設を紹介

日々の喧騒やストレスから離れ、「眠ること」を旅の目的にする「スリープツーリズム」が今、注目されています。
この記事では、神谷町カリスメンタルクリニックの松澤美愛院長監修のもと、スリープツーリズムと快眠の関係やおすすめの人などを解説します。
さらにスリープツーリズムでどんな体験ができるのか、おすすめの施設や選び方のポイントをわかりやすくご紹介します。旅先ならではの極上の眠りを味わって、心と身体をやさしく整えてみませんか。
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スリープツーリズムとは?
スリープツーリズムとは「睡眠」と「旅行」を組み合わせ、質の高い眠りを得ることを目的に旅をすることです。単なる観光やレジャーとは異なり、静かな環境や上質な寝具、心をほどくためのリラクゼーションなど、眠るために最適化された滞在プランが用意されているのが特徴です。ここでは、スリープツーリズムの意味や発祥、さらに近年注目を集めている理由について紹介します。
スリープツーリズムの意味と発祥
スリープツーリズムとは、静かな環境や上質な寝具、香りや音楽によるリラクゼーションを通して、心と身体を癒し、深い眠りを得ることを目的とした旅行スタイルです。その根底は、19世紀から続くといわれる「スロートラベル」の思想にもとづくと考えられています。これは観光地を慌ただしく巡るのではなく、1つの場所でゆったりと過ごしながら心身をリセットする旅の形です。
1960年代頃から、欧米の高級ホテルでは睡眠の質向上を意識し、高級マットレスや上質なシーツ、遮光カーテンなどを取り入れるようになったといわれています。さらに2010年代半ば以降はウェルネスの観点から睡眠の重要性が一層注目され、その需要は拡大。ホテルやリゾートは睡眠をテーマにした滞在プランを打ち出しました。近年、スリープツーリズムは世界的に広がりを見せています。
スリープツーリズムが注目される理由
近年スリープツーリズムが注目される理由は、現代人の多くが慢性的な睡眠不足や質の低下に悩まされているためです。長時間労働やデジタル機器の長時間使用、不規則な生活リズムが心身に負担をかけ、休養の必要性が高まっています。こうした背景から、旅行先で日常の喧騒から離れ、静かな環境や整った睡眠環境の中で心と身体をリセットする「スリープツーリズム」が支持を集めているのです。
海外ではスイスの高級リゾートが科学的な睡眠改善プログラムを提供したり、タイではアロマや瞑想、マッサージを組み合わせた滞在プランが展開したりと、睡眠を軸にしたサービスが充実しています。こうした動きは日本にも広がり、都市部やリゾート地で専門的なサポートが受けられる施設が複数登場しており、幅広い層から関心を集めています。
スリープツーリズムで体験できること
スリープツーリズムの目的は、ただ宿泊するのではなく「より深く眠り、心と体を整えること」です。ここでは、スリープツーリズムで実際に体験できることやその効果について紹介します。
“眠るための”整った宿泊環境
スリープツーリズムの最大の特徴は、眠ることを第一に考え抜いた宿泊環境です。快適な睡眠をサポートする高反発マットレスや上質なリネン、体温調整しやすいナイトウェアなど、細部にまで配慮された空間で過ごせます。施設によってはテレビやスマートフォンの使用を制限し、自然とデジタルデトックスを促す環境を整えている場合も。ブルーライトから離れることで、眠りに入りやすくなる効果が期待できます。
大都市のホテルではラグジュアリーなインテリアや高級寝具で非日常を味わえる一方、地方の温泉地や自然豊かな地域の宿泊施設では森林浴や散策を取り入れた特別プログラムが用意されることも。都会でも田舎でも、それぞれの立地を活かしたアプローチで「眠るための空間」が演出されています。
睡眠の質を高めるための食事・入浴・リラクゼーション
快眠には食事や入浴といった日常の習慣も大きく関わっています。スリープツーリズムの施設では、体内時計を整えるために栄養バランスに配慮したメニューが用意され、地元の新鮮な食材を使った消化にやさしい料理を堪能できます。夜は眠りにつく数時間前に食事を終えることで胃腸への負担を減らし、自然と心地よい眠りに入りやすくなるのもポイント。
さらに、ハーブや快眠効果が期待できる食材を取り入れたコース料理を用意した施設もあり、味覚だけでない様々なアプローチで気持ちをゆったりと落ち着かせ、食べること自体が癒しの時間になる体験も。
入浴も深い眠りを導く大切な要素です。温泉や大浴場で15分ほど体を温め、額にうっすら汗がにじむ程度まで体温を上げると、その後に体温が下がるタイミングで自然な眠気が訪れます。食事と入浴を組み合わせて整えることで、心身がリラックスし、翌日の活力にもつながっていくでしょう。
ヨガやマインドフルネスで心を整える
身体だけでなく、心を落ち着かせるプログラムもスリープツーリズムには欠かせません。 ヨガや瞑想、マインドフルネスといった体験は、日常生活で抱えた緊張やストレスをやわらげ、眠りやすい状態へと整える一助となります。森林浴やアロマテラピーを取り入れる施設も多く、自然の香りや深い呼吸を楽しむことで心が落ち着くことも。滞在中に心身のバランスを取り戻すことで、帰宅後も快眠習慣を維持しやすくなる点もスリープツーリズムの大きな魅力といえるでしょう。心や体をやさしく癒す森林浴スポット 家で簡単に取り入れられるリフレッシュ方法も
医師や専門家のサポートが受けられる施設も
施設によっては医師や睡眠の専門家のサポートが受けられるプログラムもあります。睡眠時無呼吸症候群の検査が宿泊プランに含まれていたり、専門医が監修したプログラムを体験できたりするプログラムです。自分の睡眠状態を可視化し課題を明らかにできるため、単なる休養にとどまらず「眠りの改善」という実践的な効果を得られます。科学的なアプローチとリラクゼーションを融合させた施設は、睡眠に不安を抱える人にとって大きな安心材料となるでしょう。
スリープツーリズムはこんな人におすすめ
ここではとくにスリープツーリズムをするのに向いている人を紹介します。
慢性的な寝不足や不眠に悩む人
スリープツーリズムは、日々の忙しさで十分に眠れない人や、布団に入ってもなかなか寝つけない人におすすめです。体験できる施設には、普段の生活では整えにくい理想的な睡眠環境が整えられています。たとえば、遮音性の高い客室や心地よい寝具、専門家によるアドバイスなどです。こうした環境に身を置くことで、自然と深い眠りに導かれやすくなります。睡眠リズムを整えるきっかけにもなり、慢性的な不眠を改善する一歩につながることもあります。【監修記事】快眠を促す呼吸法とは? 正しい呼吸で質のいい睡眠を取ろう
仕事や人間関係でストレスを感じている人
スリープツーリズムは職場のプレッシャーや人間関係の疲れで心が休まらないと感じている人にもおすすめです。緑に囲まれた静かな環境や、アロマやマッサージを組み合わせた癒しのプログラムなどに触れることで、張り詰めた気持ちがほどけるように感じることも。普段は気づかないうちに蓄積しているストレスも、スリープツーリズムを通じて軽減され、再び前向きな気持ちで日常に戻るきっかけになるでしょう。ナイトルーティンで理想の眠りを手に入れよう!心と体を整える夜習慣アイデア集
心と身体のバランスを整えたい人
「最近疲れが取れにくい」「気持ちが沈みやすい」と感じている人にも、スリープツーリズムはおすすめです。ヨガや瞑想、森林浴などで心をゆるめ、快眠を意識した食事や入浴で身体を整えることで、深い休息につながることがあります。心と身体の両方に働きかけるスリープツーリズムの体験を通じて、自分らしいリズムを取り戻し、健やかな毎日を過ごすための土台を育むことができるでしょう。【専門家監修】よもぎ蒸しの効果とは?女性にうれしい6つの効能を解説
日本国内でスリープツーリズムが体験できる施設3選
日本でも眠りをテーマにした滞在プランを導入するホテルや旅館が増えてきました。観光やグルメを楽しむだけでなく「眠ること」を目的に旅先を選ぶスタイルは、日常では得られない深いリフレッシュを与えてくれます。ここでは、日本国内でスリープツーリズムを体験できるおすすめの施設を3つ紹介します。自分に合った場所を見つけて、心と体を整える旅に出かけてみてくださいね。
【愛知】風の谷の庵

愛知県の『風の谷の庵』では、快眠セラピストであり睡眠環境プランナーとして知られる三橋美穂さんが監修した「快眠プラン」を体験できます。チェックインから就寝までの流れが丁寧に整えられており、眠りに向けて心と体をゆっくりと準備できるのが特徴です。

客室には高機能マットレス「エアウィーヴ」や、肌にやさしい三河木綿のガーゼケットが用意されており、理想的な入眠環境をサポートしてくれます。さらに、茶道や華道、線香花火など日本文化に触れる体験を通じて心を落ち着けられることも魅力です。

夕食には、快眠効果を意識した食材を使った地産地消の会席料理が並び、揚げたてのお座敷天麩羅は音でも楽しめる特別な一品です。食からも深い休息へと導かれます。アロマやリラクゼーション音楽に包まれた静かな夜に過ごすことで、心身は自然と解きほぐされ、本来の眠りのリズムを取り戻す特別な時間となるでしょう。

【東京】ホテル椿山荘東京

東京の老舗ホテル『ホテル椿山荘東京』では、最先端の技術を取り入れた「Sleep well ステイ」を体験できます。宿泊前の自宅とホテル滞在中に脳波を計測し、自分の睡眠状態を知ることができるのが大きな特徴です。チェックアウトの前には、ホテル内クリニックの医師からアドバイスを受けながら、より良い眠りの習慣を学べます。

滞在中は天然温泉での入浴や庭園散策、客室でのアロマ体験などリラックスできるメニューも充実。世界的に評価の高いSealy製マットレスが備わった客室で過ごせば、翌朝は心地よい目覚めを迎えられるはずです。科学的なアプローチとラグジュアリーな癒しが融合した特別なスリープツーリズムを楽しめますよ。
※2025年12月27日(土)まで

【鹿児島】THE SCENE(ザ・シーン)

奄美大島にある『THE SCENE アマミスパ&リゾート』では、自然とともに過ごしながら眠りを整える「快眠体質プラン」が人気です。

滞在中は、朝日を浴びながら行うサンライズヨガや、夜空の下で波の音と灯りに包まれるキャンドルヨガなど、心をゆるめる体験が充実。さらにセルフアーシングやヘッドケアなど、快眠につながる多彩なプログラムが用意されています。食事は腸から整えるアプローチが取り入れられており、内側からのケアもばっちり。

夜は満天の星や月明かりに包まれ、静けさの中で心地よい眠りへと誘われます。日常のリズムをリセットし、大自然とともに眠る贅沢な時間は、心と体をやさしく満たしてくれるでしょう。
スリープツーリズム|選び方のポイント
せっかくスリープツーリズムを体験するなら、目的やライフスタイルに合った施設を選びたいもの。宿泊日数やプログラムの内容によって得られる効果は変わるため、事前にチェックしておくことが大切です。ここでは、滞在日数の目安と施設ごとのアプローチ方法の違いについて紹介します。
滞在は何日が理想?おすすめの日数と過ごし方
スリープツーリズムは、一般的には2泊3日から3泊4日程度の滞在が多い傾向にあります。長めの滞在であれば、食事・入浴・リラクゼーションを通じて生活リズムを整えやすくなるからです。一方で1泊2日程度でも十分リフレッシュできる方も多くいます。自分に合ったプランを選ぶことが大切です。
アプローチ方法の違いをチェック|科学的 or リラクゼーション

スリープツーリズムは施設によってアプローチ方法がさまざまです。睡眠脳波の測定や医師のアドバイスといった科学的アプローチを取り入れる施設や、アロマやヨガ、温泉などリラクゼーションを重視するプランもあります。回復やデトックス、体質改善など、自分の目的に合った方法を選ぶことが快眠への近道です。
まとめ|“眠るために旅する”という選択肢

この記事ではスリープツーリズムの魅力や体験方法を紹介しました。スリープツーリズムで非日常の眠りを味わい、心身を整えてみましょう。きっと新しい自分に出会えるはずです。リトリートの効果とは?無理なく続けて心身をリフレッシュしよう!
ひとりで過ごす休日の過ごし方!充実した一日を満喫しよう

松澤 美愛
神谷町カリスメンタルクリニック院長/精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会
慶應義塾大学病院精神・神経科入局後、精神科専門病院をはじめとした、幅広い臨床現場で経験を積む。個人と社会の変化に応じた「こころのケア」を実践。2024年東京の虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」開院。精神疾患を抱える方が“自分らしさ”を取り戻すきっかけとなるよう、患者一人ひとりの背景に寄り添った診療を心掛けている。

あまち
2022年よりフリーランスとして活動中のWebライター。現在は2児の母として育児と仕事を両立に奮闘中。趣味は家族とのレジャーや、カフェで過ごすひととき。