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Oct 01, 2025

【10月におすすめの本】読書の秋に読みたい作品|季節を感じる読書法も紹介♪

秋の紅葉 落ち葉の中のカボチャと積み上げられた本 10月の読書イメージ

朝晩の空気がひんやりとし、木々が色づき始める10月。お出かけも魅力的ですが、秋の夜長にじっくり本を読む時間も格別です。心が落ち着きやすいこの季節は、物語の中で新しい景色や感情に出会うのにぴったり。

今回は秋の静けさに寄り添い、読み終えたあとそっと背中を押してくれる本を集めました。長編から短編集、絵本まで、あなたの読書時間を彩る1冊が見つかるでしょう。

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10月におすすめの本

秋といえば、「読書の秋」。10月は涼しい風とともに、ゆったりと過ごせる時間が増えてきます。心を落ち着け、自分と向き合うのにもぴったりの季節ですよね。ここでは、そんな10月におすすめの本を6冊紹介します。

「天使と悪魔のシネマ」小野寺史宜

「天使と悪魔のシネマ」小野寺史宜
「天使と悪魔のシネマ」小野寺史宜 著/ポプラ文庫

10月4日は「天使の日」。もしかすると自分の周りでも天使と悪魔が働いているのかも?と思わせられるような作品がこちら。

 

『天使と悪魔のシネマ』は運命の分かれ道に立つ人々の背後で、そっと介入する“天使”と“悪魔”の姿を描いた短編集。結婚を控えた地下鉄運転士や、酔っぱらったDV男、仕事も恋人も失った若者――彼らは自分の明日を疑うことなく生きていますが、見えないところで運命の歯車は回り始めています。天使と悪魔の仕事は派手な奇跡ではなく、ほんの小さな“ズレ”を生むこと。左に踏み出す足を右へずらす、その程度の介入が人生を大きく変えることもあるのです。物語は10篇で構成され、それぞれが独立した短編のようでありながら、読み進めるうちに人物や出来事が少しずつ絡み合い、思わぬ形で結びついていきます。最後に明かされる全体像には、きっと驚かされるでしょう。

 

10月は自分や周囲を静かに見つめ直す時間が増えます。誰もが天使にも悪魔にもなり得るという視点は、人間関係や日常の選択を改めて考えさせてくれるはずです。秋の夜長に、じっくりページをめくりながら、登場人物たちの運命がすれ違い、絡み合う瞬間を味わってみてはいかがでしょうか。

「僕は金になる」桂望実

「僕は金になる」桂望実
「僕は金になる」桂望実 著/祥伝社文庫

10月9日は「アメリカンドッグの日」です。“ドッ(10)グ(9)”という語呂合わせから生まれました。読み終えたあと思わず食べたくなるのが、この作品『僕は金になる』。秋が深まり、人とのつながりや家族の形を改めて考えたくなるこの季節にこそ、手に取ってほしい一冊です。

 

主人公の「僕」が小学6年生の春に両親が離婚し、母と僕、父と姉という組み合わせで暮らすことに。母は「ご立派」と称されるほど真面目で堅実な人。僕も学校に通い、勉強をして、当たり前の毎日を送ります。一方の父は仕事もせず、将棋の天才である姉に賭け将棋をさせて各地を渡り歩く破天荒な生活。非常識で何もできないくせに、なぜか楽しそうに生きる2人を軽蔑しつつも羨ましく感じてしまう僕。普通”と“破天荒”――正反対の生き方を選んだ家族の40年が描かれる中で、平凡だと思っていた日々にも笑いや涙、そしてささやかな誇りがあることに気づかされます。読み進めるうちに、互いを認め合う家族の姿がじんわりと胸に沁みてくるでしょう。

 

秋は、過ぎてきた日々やこれからの生き方に想いを巡らせやすい季節です。自分にとっての“普通”が実はかけがえのない“特別”であることを、この物語が静かに教えてくれるでしょう。本を手に取って、ちょっとあたたかくて少し切ない時間を味わってみませんか。

「影裏」沼田真佑

「影裏」沼田真佑
「影裏」沼田真佑 著/文春文庫

10月10日は「釣りの日」。幼児語や方言で魚を意味する「とと」を、“と(10)と(10)”と読む語呂合わせが由来となっています。静かな水面に糸を垂らす時間は、秋の深まる気配とよく似ています。人と人の間に潜む影を描いた芥川賞受賞作『影裏』は、この季節にこそじっくり味わいたい物語です。

 

会社の出向で岩手へ赴任したわたし(今野)が、唯一心を許したのは同僚の日浅。共に竿を構え、生出川で渓流釣りを楽しみ、酒を酌み交わすうちに自然と距離が縮まっていきます。しかし、東日本大震災がすべてを変えます。日浅は行方不明となり、わたしは彼の消息を追って実家を訪ねます。そこで知るのは、日浅が見せなかったもう一つの顔。親しかったはずの相手が抱えていた影の部分は、理解しようとしても決して掴み切れないまま、川底のように深く沈んでいきます…。

 

『影裏』は、豊かな自然描写と繊細な心理表現が、2人の関係に漂うやるせなさや心の空白を際立たせる作品です。秋の澄んだ空気の中で読むと、川面の揺らぎや落ち葉の音までもが、ページの向こうから届くように感じられるでしょう。釣り糸が水中で見えない魚とつながるように、人の心の奥底にも見えない糸がある――そんなことを思わせる1冊です。

「ボス/ベイカー」上田未来

「ボス/ベイカー」上田未来
「ボス/ベイカー」上田未来 著/双葉社

10月16日は「ボスの日」。アメリカでは、ボスの日に自分の上司へ手紙や贈り物をする風習があります。そんなボスの日に読むなら、人生の分岐点と“ボス”という存在の意味を鮮烈に描いた『ボス/ベイカー』はいかがでしょうか?

 

天才錠前師の錠二は、元パン屋で盗人の太陽と出会い、悪人専門の泥棒チームに加わります。やがて4人組は完璧な仕事をこなす仲間となりますが、ある日、錠二は太陽から横領の疑いをかけられ、激しい怒りの末に銃を向けます。その瞬間、物語は二つに分岐します。ひとつは銃弾が命中し、太陽を失って、自らが“ボス”となって裏社会を歩む世界。そしてもう一方は銃弾が不発に終わり、太陽と共に足を洗ってパン屋開業を目指す世界。正反対の道を進む2つの運命は、やがて思わぬ形で再び交差していきます。泥棒としての冷酷な日々も、パンの香りに包まれた穏やかな日常も、それぞれが錠二の人生の一部。選んだ道が違っても、守りたいものや背負う過去からは逃れられない――そんな事実を静かに感じる物語です。

 

自分のこれまでの選択や、もし別の道を歩んでいたらという“もう一つの人生”を想像することもあるのではないでしょうか。2つの並行世界を描く『ボス/ベイカー』は、どんな道を選んでも「自分は自分」であることを感じさせます。本を読んだ後には、今の自分が歩んでいる道を少しだけ愛おしく感じるかもしれません。

「ヒカルの卵」森沢明夫

「ヒカルの卵」森沢明夫
「ヒカルの卵」森沢明夫 著/徳間文庫

10月30日は「卵かけごはんの日」。日本卵かけごはんシンポジウム実行委員会が、米と卵の魅力を広めるために制定しました。そんな卵かけごはんの日に読みたいのが、卵かけご飯をめぐる夢と挑戦を描いた『ヒカルの卵』です。

 

舞台は限界集落と呼ばれるほどの山間の村。自称“ツイてる”養鶏農家の村田二郎は、村を元気にするために世界初の卵かけご飯専門店を開こうと決意します。しかも立地は不便な森の中。料金は無料という型破りな計画です。当然、村の仲間たちは猛反対。しかし二郎は養鶏場を担保に入れ、人生を懸けた大勝負に踏み出します。やがてオープンした店は、二郎の人柄や周囲の人々の温かさに支えられ、村に少しずつ変化をもたらしていきます。

 

食の喜びや人とのつながり、生きることの素晴らしさをユーモラスかつ温かく描いたハートフルコメディです。ただおいしい物を食べる楽しみだけではなく、食を通して人と心を交わすことができる喜び。『ヒカルの卵』は、そんなことが感じられる秋にぴったりの物語です。読み終わったあと、きっと卵かけご飯を食べたくなるでしょう。

「くすのきだんちへおひっこし」作: 武鹿 悦子/絵: 末崎 茂樹

「くすのきだんちへおひっこし」作: 武鹿 悦子/絵: 末崎 茂樹
「くすのきだんちへおひっこし」作: 武鹿 悦子/絵: 末崎 茂樹/ひかりのくに

10月13日は「引っ越しの日」です。明治元年のこの日、明治天皇が京都御所から江戸城へお引越ししたことに由来します。そんな引っ越しの日におすすめしたいのが、ぬくもりあふれる絵本『くすのきだんちへおひっこし』です。

 

春の野原にやってきたカエルは、光る窓が並ぶ大きなくすのきだんちを見つけます。好奇心に駆られて訪ねてみると、そこには個性豊かな動物たちが暮らしていました。水泳のコーチであるカエルは、新しい住人として仲間入りしますが、ある日ケガをしてしまいます。そんなとき、住人たちが協力して助けてくれたことで、カエルは「ここに来てよかった」と心から感じるようになり――

くすのきだんちは住人同士が顔を知り、支え合って暮らす場所。現代では少なくなったあたたかな人間関係が、この団地には息づいています。ページをめくるたび、色彩豊かな絵とやさしい言葉が、読んでいる人の心をほっと包み込んでくれます。

 

『くすのきだんちへおひっこし』は、思いやりや助け合いの大切さを子どもにも大人にもそっと届けてくれる絵本。読み終えたあと、あなたも「こんな場所に住んでみたい」と思うでしょう。

10月におすすめの読書法3選

実りの秋をむかえる10月。ぜひ自然を感じながら読書してみてはいかがでしょうか。ここでは10月におすすめの読書法を3つご紹介します。自分なりの読書の秋を存分に楽しんでくださいね。

栗がゆであがるのを待ちながら読書

小皿に入ったゆで栗 渋皮煮

 

栗をゆでながらの読書がおすすめ。コトコトと鍋から湯気がのぼる音を聞きながら、本を開いて待つ時間は秋ならではというもの。ふわっと広がる栗の甘い香りが物語に彩りを添えてくれるから、心地良く読書を楽しめます。本に夢中になっているうちに、栗はちょうど食べごろに。読後の余韻と一緒にホクホクの栗をほおばれば、まさに秋を丸ごと味わうような幸せなひとときになりますよ。

キンモクセイの香りに包まれながら読書

満開の金木犀 キンモクセイ

 

10月になると、ふとした道端から甘いキンモクセイの香りが漂ってきますよね。その香りに包まれながらの読書はなんとも格別な癒し時間に。ページをめくるたびにふわっと届く花の香りは、物語をほんの少し幻想的にしてくれるでしょう。ベンチに腰かけても、窓を開けた部屋でも、香りが漂ってきたらそこが特別な読書スポットに変わります。言葉と香りが重なり合う時間は、きっと記憶に残る読書体験になるはずです。

釣りをのんびり楽しみながら読書

岸壁に置かれた釣り道具

 

10月の澄んだ空気のなかで、釣りをしながらのんびり読書を楽しむのもおすすめ。仕掛けを投げ入れて、魚がかかるまでの静かな時間にページをめくると、自然と本の世界に入り込めます。水面にきらめく光や、心地よい風の音がBGMになって、読書も一層はかどるでしょう。竿の先をちらりと気にしつつ、本を開いて待つ時間は、釣果があってもなくても贅沢なひとときです。【100均】ダイソーのおすすめ釣道具!必要なものを揃えて親子で初めての釣りを楽しもう

おわりに

栗と柿とコーヒーと本 秋の読書イメージ

 

秋が深まる10月は、ちょっとした時間や香り、景色が読書の楽しみを大きくしてくれる季節です。五感を刺激しながら読めば、本の世界と現実がやさしく溶け合うように感じられるでしょう。物語に心を委ねつつ、秋の風や香りを一緒に味わうひとときは、忙しい日常のなかで思いがけないご褒美になります。お気に入りの一冊を手に、この10月ならではの読書時間を楽しんでみてください。2024年【10月におすすめの本】秋の空気を楽しむ!この時期ならではの読書法も紹介♪【都内】紅葉が綺麗なスポット&おすすめカフェ・レストラン|レジャーやデートにも!

あまち

written by...あまち

2022年よりフリーランスとして活動中のWebライター。現在は2児の母として育児と仕事を両立に奮闘中。趣味は家族とのレジャーや、カフェで過ごすひととき。