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Sep 01, 2025

【9月におすすめの本】暑さ和らぐ夜に。秋の夜長にぴったりの作品と、この時期ならではの読書法を紹介

夏の熱気が少しずつやわらぎ、夜風に秋の気配を感じる9月。外に出かけるのも気持ちいいけれど、ふと足を止めて物語の世界に浸ってみるのも贅沢な時間の使い方ではないでしょうか。

この記事では、9月に読みたいおすすめの本と、そしてちょっとユニークな読書の楽しみ方をご紹介。いつもの自分をほんの少し離れて、本の中で新しい景色や物語に触れることで、心の奥に眠っていた思いや願いに気づけるかもしれませんね。

【8月におすすめの本】夏のひとときを豊かに。暑いこの時期に読みたい作品と楽しみ方を紹介

9月におすすめの本

新学期が始まったり、季節の変わり目を迎えたりと、何かと気持ちを切り替えたくなるこの時期。今回ご紹介するのは、9月にこそ読みたい、そっと背中を押してくれるような本ばかり。ぜひ最後までご覧ください。

「キウィおこぼれ留学記」小林聡美

「キウィおこぼれ留学記」小林聡美
「キウィおこぼれ留学記」小林聡美 著/幻冬舎文庫

9月1日は「キウイの日」。これは「キウ(9)イ(1)」の語呂合わせから、ニュージーランド産キウイを輸入・販売する会社が制定した記念日です。ちなみに「キウイフルーツ」という名前は、1959年にニュージーランドからアメリカへ輸出される際、ニュージーランドのシンボルである鳥「キーウィ(kiwi)」にちなみ名付けられたのだとか。そんな「キウイの日」におすすめなのが、『キウィおこぼれ留学記』です。

 

俳優として多忙な日々を送る著者が、ふと思い立った「お試し留学」。舞台は南半球、秋の終わりのニュージーランドです。優しい初老の夫婦の家にホームステイし、学生気分で英語の授業を受け、日常を少し離れて異国の空気を胸いっぱいに吸い込む――。たった10日間という短い期間ながらも、慣れない授業に奮闘したり、思わぬ体調不良に見舞われたりと、ハプニングも含めて「非日常」を味わい尽くす様子がユーモラスに綴られています。

 

小林聡美さんのエッセイは、肩の力を抜いて読めることが魅力のひとつです。言葉の選び方にクスッと笑えたり、何気ない描写にハッとしたり、気づけば自分まで小さな旅をしている気分になります。夏の終わり、新しい季節を迎える前に、いつもと違う場所へ心だけでも飛ばしてみませんか。

「花のベッドでひるねして」吉本ばなな

「花のベッドでひるねして」吉本ばなな
「花のベッドでひるねして」吉本ばなな 著/幻冬舎文庫

9月3日は「睡眠の日」。「ぐっ(9)すり(3)」の語呂合わせから、睡眠の大切さを考える記念日として制定されました。夏の寝苦しさがやわらぎ、ふかふかの布団にくるまれて昼寝をしたくなる季節がやってきます。そんな季節にぴったりなのが、『花のベッドでひるねして』です。

 

物語の主人公は、海辺で拾われた捨て子の幹。血の繋がりはなくとも優しい家族に囲まれ、祖父が遺した小さな民宿で忙しくも幸せな日々を送っていました。しかし、村の廃墟ビルに灯りが点いてから、幹のまわりに少しずつ不穏な出来事が忍び寄ります。家族の不幸や夢に現れる不吉なうさぎ、玄関前に小石を置いていく誰かの気配――次第に不穏さが増していくなか、幹と村の人々が紡ぐ小さな営みが、ゆがんだ世界を元の形へと引き戻します。

 

この作品は柔らかな文体と不思議な物語の奥に流れる優しさが沁みわたる1冊です。気持ちが落ち着かないときに読めば、家族や身近な人との大切な繋がりを思い出させてくれるはず。ほんのひととき、物語の中でまどろむように心を休めてみてください。眠りに落ちる前の静かな時間に、布団にくるまって読むのにもぴったりの1冊です。

「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子

「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子 著/河出書房新社
「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子 著/河出書房新社

9月15日は「敬老の日」。大切な人の長寿を祝い、日ごろなかなか伝えられない感謝の気持ちを形にし、これからも元気に過ごしてほしいと願う日です。敬老の日に手に取りたいのが『おらおらでひとりいぐも』です。

 

物語の主人公は、74歳の桃子。24歳で故郷を飛び出し、上野駅に降り立ってから50年。住み込みのアルバイトを経て周造と出会い結婚、2人の子どもに恵まれ、長年暮らした都市近郊の新興住宅で夫に先立たれた今は、ひとり静かに暮らしています。「この先ひとりでどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」――そんな日々のなか茶をすすり、ねずみの音に耳を澄ませていると、桃子の内から外から声がジャズのセッションのように溢れ出します。捨てた故郷への想い、疎遠になった息子や娘への複雑な気持ち、亡き夫への愛情。震えるような悲しみと向き合いながら、桃子が辿り着くのは、新たな老いの境地です。

 

老いるとはただ弱っていくことではなく、まだ見ぬ自分に出会い直すことかもしれません。この物語は老いの形を私たちにそっと教えてくれます。「歳をとることも悪くない」そう思わせてくれる玄冬小説の傑作を、敬老の日にぜひ。

「パラ・スター」阿部暁子

「パラ・スター」阿部暁子 著/集英社文庫
「パラ・スター」阿部暁子 著/集英社文庫

9月23日は「テニスの日」。秋分の日にあたり、誰でもスポーツを楽しめるようにと制定された記念日です。テニスの日にぜひ手に取ってほしいのが、車いすテニスに夢をかける若者たちの挑戦と絆を描いた青春小説『パラ・スター』です。

 

高校2年生のとき、事故で脊髄を損傷し、車いすでの生活を余儀なくされた宝良を救ったのは、親友の百花が誘った車いすテニスの観戦でした。初めて観た試合に魅了された宝良は、やがて日本代表に選ばれるまでの選手へと成長します。一方、百花も競技用車いすの美しさに心を奪われ、宝良のために最高の車いすを作ろうと決意。車いすメーカーの若手エンジニアとして奮闘しますが、現実の厳しさや技術の壁に何度もぶつかります。それでも、信じてくれる親友のため、夢を形にするために、百花は前を向きます。

 

この作品は<Side百花>と<Side宝良>の2パートに分かれ、それぞれの視点で車いすテニスにかける想いを垣間見ることができます。汗と涙の青春が詰まったこの物語は、きっと読む人の背中をそっと押してくれるはずです。テニスの日に、2人の絆と挑戦を感じてみてくださいね。【東京都内】初心者におすすめのスカッシュ!気軽に体験ができる施設やスポーツクラブを紹介!

「対岸の彼女」角田光代

「対岸の彼女」角田光代
「対岸の彼女」角田光代 著/文春文庫

9月25日は家事や育児に忙しい主婦がリフレッシュできる時間をもとうと提唱された「主婦休みの日」。家事や育児、日々のタスクから少しだけ離れて自分を取り戻す日におすすめしたいのが『対岸の彼女』です。

 

物語の主人公は35歳の専業主婦・小夜子。日々家事と育児に追われ、社会との接点を失いかけていた小夜子は、同い年のベンチャー企業の女社長・葵に誘われ、ハウスクリーニングの仕事を始めます。自分の力で会社を切り盛りする葵と、家庭にすべてを捧げてきた小夜子。立場も過去も違う2人が出会い、心の奥をさらけ出しながら築いていく友情と、そこに生まれる葛藤が胸に迫る感動の物語です。

 

多様化した現代を生きる女性だからこそ、誰かのために尽くすうちに見失いがちな「自分自身」を取り戻すヒントが詰まっています。少し立ち止まり、ページをめくりながら、自分を大切にする時間を過ごしてみてくださいね。ヒュッゲな暮らしとは~基本的な考え方や気軽に取り入れるコツ、具体的な方法を紹介

「あらしのよるに」きむらゆういち

「あらしのよるに」きむらゆういち
「あらしのよるに」きむらゆういち 作・あべ弘士 絵/講談社

9月26日は「台風襲来の日」。これは1941年に日本に大きな被害をもたらした台風が由来とされています。台風の季節である9月にこそおすすめしたいのが、嵐の夜を舞台に生まれた名作絵本『あらしのよるに』です。

 

嵐の夜、激しい風雨の中、白ヤギは身を守るようにボロボロの小屋に飛び込みます。真っ暗な小屋の中、そこで出会ったのはオオカミでした。お互いに暗闇で相手の正体がわからないまま、風邪で鼻も利かず、2匹は相手を仲間だと思い込みます。嵐の音を聞きながら言葉を交わすうちに不思議な安心感が生まれ、2匹は不思議な友情を育んでいきます。本来ならヤギとオオカミは自然界では相容れない関係です。しかし、知らずに心を通わせてしまったことで、「食べる・食べられる」という関係を超えて結ばれた絆が、子どもにも大人にも大切なことを教えてくれます。

 

続きが気になってページをめくるワクワク感は、大人も子どもも同じ。だからこそおうち時間を少し特別にしてくれるのが、この物語の魅力です。温かい飲み物を片手に、家族で声に出してページをめくりながら、普段とは少し違う親子の時間を楽しんでみてくださいね。『あらしのよるに』は、『あるはれたひに』『くものきれまに』など続編が刊行されています。続きもぜひチェックしてみましょう。

9月におすすめの読書法

9月は外で本を読むのにぴったりの季節。暑すぎず、涼しい風が心地よくて、ページをめくる手も自然と軽くなります。そんな時期におすすめの読書法を3つご紹介。9月ならではの読書体験が楽しめますよ。

コスモス畑を眺めながら読書

コスモスの花 花畑と青空と山

 

9月の花といえばコスモス。コスモス畑に座ってみると、ピンクや白の花がゆらゆら揺れて、その向こうには高い秋空。ときどき顔を上げて景色を眺めると、花の色や香りがふわっと気分をほぐしてくれそう。静かな環境で本の世界に浸りつつ、自然の景色も味わえる——そんな贅沢な時間を過ごせるのは、この時期ならではといえるでしょう。

秋の入り口におすすめの9月のお花と飾り方|くらしの花図鑑国営ひたち海浜公園のコキアの魅力 秋は紅に染まるコキアを楽しもう!

お月見しながら読書

お月見 十五夜イメージ 満月とススキ

 

9月の夜は、お月見しながらの読書が最高です。秋の夜空にぽっかり浮かぶ明るい月は、それだけで特別な照明のよう。静かな空気の中でページをめくっていると、本の世界にぐっと入り込めます。月明かりだけじゃ文字が見づらいときは、小さなランタンやキャンドルを用意すると雰囲気もぐんとアップ。涼しい夜風に包まれながら、お茶やブランケットと一緒に過ごす時間は、まさに大人の夜の楽しみではないでしょうか。自然と物語、どちらも心に染みる贅沢な読書時間です。月見団子の人気レシピ!子どもと作れる簡単アレンジ&おいしい食べ方も

ベッドでまどろみながら読書

ベッドサイドと間接照明と本 夜の読書イメージ

 

9月の夜や休日の朝は、ベッドでまどろみながらの読書がおすすめです。ふかふかの布団ややわらかい毛布にくるまりながらページをめくると、それだけで気持ちがゆるんでいきます。涼しくなってきた季節の空気が心地よく、だんだんまぶたが重くなるのもまた幸せ。ベッドサイドのあたたかな灯りの中で短編やエッセイを読めば、そのまま夢の世界へ…。本と眠りの間を行き来する時間は、秋ならではの小さな贅沢です。【専門家監修】理想の寝る時間って?年齢別・最適な睡眠時間と快眠のポイントを詳しく解説

おわりに

布団を被り読書をする日本人の女性

 

季節がゆっくりと夏から秋へと移り変わる9月は、心と体のギアを少しゆるめて、自分だけの読書時間を楽しむのにぴったりです。お気に入りの本を手に、外ではコスモス畑や月明かりの下で、家ではベッドの中でまどろみながら——場所やシチュエーションを変えるだけで、同じ本もまるで違う表情を見せてくれます。

 

この秋は、ページをめくる指先に季節の気配を感じながら、物語とともにあなただけの9月をゆっくり味わってみてはいかがでしょうか。
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あまち

written by...あまち

2022年よりフリーランスとして活動中のWebライター。現在は2児の母として育児と仕事を両立に奮闘中。趣味は家族とのレジャーや、カフェで過ごすひととき。