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Nov 01, 2025

【11月におすすめの本】肌寒さの中にぬくもりを感じるこの時期に。秋ならではの読書方法も紹介

ソファでくつろいで読書する女性の手元

木々の色づきや冷たい風に季節の移ろいを感じる11月。年の終わりが近づくこの時期は、1年を振り返ったり、新しい年に向けて気持ちを整えたりしたくなるものです。そんな11月こそ、本の世界に身をゆだねてみませんか。物語の中で出会う景色や言葉が、新年へ向けて小さな道しるべになってくれるでしょう。

【10月におすすめの本】読書の秋に読みたい作品|季節を感じる読書法も紹介♪

11月におすすめの本

今回紹介する本は、心を温めてくれるものから、思わず深く考えさせられるものまで、秋の夜長にぴったりのラインナップです。あたたかい飲み物を用意して、読書の時間を贅沢に楽しんでみてはいかがでしょうか。

「ビジテリアン大祭」宮沢賢治

『ビジテリアン大祭』 宮沢 賢治 KADOKAWA/角川文庫
『ビジテリアン大祭』 宮沢 賢治 KADOKAWA/角川文庫 ※販売は終了しています

11月1日は「世界ヴィーガンデー」です。卵や乳製品を含む動物性食品を口にしないヴィーガン(菜食主義者)の考え方を広めるため、1994年にヴィーガン協会が制定しました。命と向き合うことや食の在り方について考えるのにふさわしいこの日に手に取りたいのが、宮沢賢治の『ビジテリアン大祭』です。

 

物語は世界中の菜食主義者たちが集まる大祭を舞台に展開します。普段は少数派として肩身の狭い思いをしている彼らが堂々と集い、そこで非菜食主義者たちと弁論を繰り広げます。表面的には食文化の違いをめぐる議論ですが、その奥に浮かび上がるのは「理性」と「感情」という人間の根源的な対立。論理的に正しいことと、心が正しいと感じること――その狭間で揺れる人間の姿を、賢治はユーモラスかつ鋭い筆致で描き出しています。

 

『ビジテリアン大祭』は、毎日の食事の背景にある命の重みや、自分の価値観とどう向き合うかを考えるきっかけを与えてくれるでしょう。静かな夜にページを開けば、食卓に並ぶ一皿の意味が少し違って見えてくるかもしれません。進化し続けるヴィーガンカフェ「エイタブリッシュ」川村さんが考えるSDGs

「最高のアフタヌーンティーの作り方」古内一絵

「最高のアフタヌーンティーの作り方」古内一絵
『最高のアフタヌーンティーの作り方』古内一絵 著/中央公論新社

11月1日は「紅茶の日」。日本人が公式な場で初めて本格的な紅茶を口にしたとされる逸話にちなみ、日本紅茶協会が制定しました。そんな紅茶にまつわる記念日に読みたいのが、古内一絵の『最高のアフタヌーンティーの作り方』です。

 

主人公の涼音は、老舗ホテル「桜山ホテル」で念願だったアフタヌーンティーチームに配属されます。胸を躍らせて提出した初めての企画書は、シェフ・パティシエの達也に冷たく却下されてしまうのです。「最高のアフタヌーンティーとは何か」と悩む涼音は、お客様や先輩たちの姿、そして達也の影の努力を知ることで、少しずつ自分なりの答えを見つけていきます。華やかなホテルの舞台裏を背景に、仕事に向き合う葛藤と成長が爽やかに描かれた一冊です。

 

『最高のアフタヌーンティーの作り方』を読むと、仕事や日常の中で「誰かを喜ばせたい」という思いが、どれほど大切な力になるか気づかされます。紅茶を味わうように一つひとつの場面を丁寧に楽しめるこの物語は、秋の夜長に心を満たしてくれます。本を読んだ後には、ホテルのラウンジやカフェで実際にアフタヌーンティーを楽しみたくなるはず。物語を思い出しながら味わえば、きっと普段以上に特別な時間になるでしょう。紅茶は種類で味がこんなに変わる? ホッと一息におすすめのマリアージュも紹介

「傲慢と善良」辻村深月

「傲慢と善良」辻村深月
『傲慢と善良』辻村深月 著/朝日文庫

11月6日は「お見合い記念日」。戦後間もない1947年、多摩川の河川敷で集団お見合いが開かれたことに由来しています。そんな日に読むのにふさわしいのが、結婚観や人との関わりを改めて考えさせてくれる辻村深月の『傲慢と善良』です。

 

物語は2部構成。第1部は架(かける)の視点で進みます。30代後半を迎えた架は孤独への不安から婚活を始め、結婚相談所で出会った真実(まみ)と婚約。しかし結婚を目前に控えたある日、真実は突然姿を消してしまいます。彼女を探す過程で架は真実の過去を知ることになり、同時に自らの弱さや選択を直視せざるを得なくなります。

 

第2部では視点が真実に移り、彼女が抱えていた苦悩や心情が浮かび上がっていき――この本を読む前と後で「傲慢」と「善良」という言葉の見え方は、大きく変わります。自分の価値観を押し通す傲慢さと、相手に合わせすぎる善良さ。その両方が同じ人の中に存在するからこそ、結婚や人間関係は難しいものです。本を読むと現代の「幸せとは何か」を考えさせられます。

 

秋が深まる11月は、人とのつながりや未来の在り方を振り返りたくなる時季です。『傲慢と善良』を読んで、自分の結婚観や人との向き合い方を振り返ってみてはいかがでしょうか。ヒュッゲな暮らしとは~基本的な考え方や気軽に取り入れるコツ、具体的な方法を紹介

「着物をめぐる物語」林真理子

「着物をめぐる物語」林真理子
『着物をめぐる物語』林真理子 著/新潮文庫

11月15日は「きものの日」です。七五三にちなみ、家族そろってきもの姿で過ごしてほしいという願いを込めて制定されました。日本の伝統文化に改めて目を向けたいこの日に読むなら、林真理子の短編集『着物をめぐる物語』がおすすめです。

 

『着物をめぐる物語』には、着物をめぐる11の物語が収められています。歌舞伎座の楽屋に藤娘の衣裳で現れる女形の幽霊、戦時下で着物を褒めてくれた青年のたどった運命、夫と子を失い越後上布を織り続ける老女、男に翻弄されたホステスが残した着物など――華やかさの裏にある哀しみや情念、そして時代を超えて受け継がれる力強さが描かれていきます。

 

着物は単なる衣服ではなく、人の記憶や想いを宿す特別な存在。だからこそ、読むほどに日本人の暮らしや感情の深みに触れられるのが『着物をめぐる物語』の魅力です。秋も深まる11月は、七五三やきものの日を通して日本の伝統を身近に感じられる時季。『着物をめぐる物語』を読んで、着物文化に込められた豊かさを再発見してみてはいかがでしょうか。歌舞伎の観劇マナー&楽しみ方!服装・持ち物・上演中のルールまで初心者向けに徹底解説!【動画付き】風呂敷の便利な使い方とおしゃれな包み方講座

「ピザトーストをひとりで食べる」加藤千恵

「ピザトーストをひとりで食べる」加藤千恵
『ピザトーストをひとりで食べる』加藤千恵 著/幻冬舎文庫

11月20日は「ピザの日」。ピザの原型とされる「ピッツァ・マルゲリータ」の名の由来となったイタリア王妃マルゲリータの誕生日にちなんで制定されました。ピザといえば誰かとシェアするイメージが強いですが、加藤千恵の『ピザトーストをひとりで食べる』は、孤独や恋愛の揺れとともに「ひとりで食べる時間」を見つめ直させてくれる1冊です。

 

『ピザトーストをひとりで食べる』には恋と食が織り交ざる30編の短編と短歌が収められています。家を出ていく恋人が最後に作った肉味噌焼きそば、夫の浮気を知らずに作った生ハムのマリネ、密かに想いを寄せる女友達と分け合った揚げ春巻き、婚約破棄の後に実家で食べた長芋の短冊など――。

 

ささやかな料理や1皿がそれぞれの登場人物の心情と結びつき、切なさや温もりを鮮やかに描き出しています。登場するのは10代の甘酸っぱい片想いを抱く少女から、大人の事情に揺れる女性までさまざま。彼女たちの物語には自分と重なる部分がなくても、不思議と心の奥に共鳴するものを感じるでしょう。

 

食の記憶は誰にとっても大切なもの。秋が深まり人恋しくなる11月に読むと、自分の過去や人とのつながりを思い返さずにはいられません。『ピザトーストをひとりで食べる』を読んで、食と恋が織りなす小さなドラマに浸ってみてはいかがでしょうか。冷凍トースト作り置きの1週間レシピ♪忙しい朝の時短&フードロス削減にも

「ゆかいなゆうびんやさん おとぎかいどう自転車にのって」作ジャネット&アラン・アルバーグ /訳 佐野洋子

「ゆかいなゆうびんやさん おとぎかいどう自転車にのって」作ジャネット&アラン・アルバーグ /訳 佐野洋子
『ゆかいなゆうびんやさん おとぎかいどう自転車にのって』ジャネット&アラン・アルバーグ 作、佐野洋子 訳/文化出版局

11月23日は「いいふみの日」。語呂合わせにちなみ、手紙を書くことや大切な人に気持ちを伝えることを見直す日です。そんな日にぴったりなのが、仕掛けいっぱいの絵本『ゆかいなゆうびんやさん おとぎかいどう自転車にのって』です。

 

主人公は自転車で野山を駆け抜ける郵便屋さん。最初に向かうのは3匹のくまの家。差出人はなんと、くまたちのおかゆをすべて食べて、さらに椅子を壊してしまった女の子です。次はヘンゼルとグレーテルの魔女のお菓子の家、さらにジャックと豆の木の大男やシンデレラ姫のお城へと、配達先は次々に変わります。

 

おとぎ話の主人公たちが受け取る手紙は、謝罪文や招待状、広告などさまざま。ページのポケットから実際に手紙を取り出せる仕掛けがあり、子どもはもちろん大人も夢中になれる1冊です。この絵本の魅力は物語と一緒に「手紙を開くワクワク感」を味わえること。おとぎ話の世界と現実がつながる感覚に、思わず心が弾みます。

 

秋が深まり人恋しさを感じやすい11月。手紙を通じて誰かと気持ちを分かち合う温かさを思い出させてくれるこの絵本は、親子での読み聞かせにも、自分へのご褒美にもぴったりです。『ゆかいなゆうびんやさん』を読んで、手紙の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。大人が習字を始めるメリットって?書道の魅力と楽しみ方、必要なものを知っておこう家族の絆をはぐくむ、おうち用ポスト

11月におすすめの読書法

秋も終盤に近づく11月。忙しい日々に流されてあっという間に年末を迎えてしまいそうなこの時期こそ、読書で心のゆとりを作ってみませんか。ここでは11月におすすめの読書法を3つご紹介します。ぜひ実りのある読書時間を過ごしてくださいね。

紅茶を楽しみながら読書

紅茶と本とサボテン

 

だんだんと寒さが増してくるこの時期は、あたたかい紅茶を片手に本を読むのがぴったりです。本があれば紅茶を蒸らす時間もあっという間。物語の世界にじっくり浸かりたいときも、ちょっと一息つきたいときも、紅茶の優しい香りが心をほっと落ち着かせてくれます。お気に入りの茶葉を見つけて、読書と一緒に“自分の心を温める時間”を楽しんでみませんか?都内でハーブティーが楽しめる販売店やカフェ特集!雰囲気も魅力的♪

秋の澄んだ空気を感じながら読書

秋 紅葉散る中ベンチで読書する女性

 

秋が深まる11月は、空気がきりっと澄んでいて気持ちのいい季節。そんな爽やかな空気を感じながら外で本を開くのもおすすめです。公園のベンチやカフェのテラス、少し冷たい風を感じる場所で読むと、物語の言葉がいつもよりまっすぐ心に届く気がします。深呼吸をするたびに、冷たくて清らかな空気が体の中を通り抜けて、気持ちまでリセットされるよう。静かな時間の中で、本の世界と自然の静けさを同時に味わう――そんな贅沢な読書時間を過ごせるでしょう。【都内】紅葉が綺麗なスポット&おすすめカフェ・レストラン|レジャーやデートにも!

お風呂で温まりながら読書

お風呂 リラックス 読書やボディケア

 

肌寒くなってくるこの時期に、湯船にゆっくり浸かりながらの読書もおすすめです。湯気の向こうでページをめくる時間は、心までぽかぽか温まる特別なひととき。特にこの季節はお風呂に旬の果物・みかんを浮かべると、さわやかな香りがふんわりと広がって、リラックス効果も抜群です。お気に入りの短編やエッセイを選んで、湯気と香りに包まれながら読むと、日々の疲れもすっとほぐせることでしょう。体も心も温めながら、ゆったりと本の世界に浸ってみませんか?【医師監修】温活の効果とは?具体的な方法や冷えが身体に与える影響を解説

おわりに

秋 紅葉散る中、外でホットドリンク片手に読書する女性

 

ゆっくりと秋が深まり、肌寒さの中にぬくもりを感じる11月。あたたかい紅茶の香りや澄んだ空気、お風呂の湯気――そのどれもが、読書の時間をより豊かにしてくれます。ページをめくるたびに季節の気配が寄り添ってくるようで、本を読むことそのものが“私を整えるひととき”になるはずです。

 

忙しい毎日の中でも、ほんの少しだけ本と向き合う時間をつくって、心を豊かに満たしてあげてください。11月の静けさの中で読む物語は、きっと心に長く残る一冊になるでしょう。2024年【11月におすすめの本】秋深まる11月におすすめ。季節を感じる読書法も紹介♪【2025年】東北の美しい紅葉スポットを楽しみ方別に紹介!|ロープウェイ・ライトアップ・温泉

あまち

written by...あまち

2022年よりフリーランスとして活動中のWebライター。現在は2児の母として育児と仕事を両立に奮闘中。趣味は家族とのレジャーや、カフェで過ごすひととき。