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Dec 01, 2025

【12月におすすめの本】一年を締めくくる心に残る作品とこの時期ならではの楽しみ方を紹介

街にイルミネーションが灯り、吐く息が白く染まる12月。1年を締めくくるこの時季は、頑張った自分をねぎらい、静かに心を整える時間をもちたくなります。そのような12月こそ、本の世界に身をゆだねてみませんか?


今回紹介するのは、心をほっと温めてくれるものから、読み終えたあとに深く考えさせられる作品まで、多彩な世界が詰まった6冊です。お気に入りのブランケットに包まれて、ゆっくりと物語の世界へ旅してみましょう。

【11月におすすめの本】肌寒さの中にぬくもりを感じるこの時期に。秋ならではの読書方法も紹介

12月におすすめの本

原田マハ「キネマの神様」

原田マハ「キネマの神様」
『キネマの神様』原田マハ 著/文藝春秋

12月1日は「映画の日」です。日本で初めて映画が一般公開されたことを記念して制定されました。街のイルミネーションが輝く12月、スクリーンの明かりのように心を照らしてくれる物語を読んでみませんか。そこでおすすめなのが、原田マハの『キネマの神様』です。

 

物語の主人公は、39歳で独身の歩(あゆみ)。社内の対立に巻き込まれ勤めていた会社を辞めた彼女は、先行きの見えない日々を過ごしています。そんな折、ギャンブル好きで借金癖のある彼女の父が、娘の書いた映画愛にあふれる文章を勝手に映画専門誌「映友」のサイトへ投稿。その文章が編集部の目に留まり、歩は新しい仕事を得ることに。しかし、実は編集部が注目していたのは、父の文体そのものだったのです。父と娘はそれぞれの思惑を胸に、映画ブログ「キネマの神様」を立ち上げます。そこから2人の人生は静かに、けれど確かに変わっていきます――。

 

映画を通じて世代も価値観も違う父と娘が少しずつ心を通わせていく姿は、読む人の心を優しく包み込みます。『キネマの神様』を読んで、大切な人と過ごす時間や、好きなものを語り合う幸せを改めて感じてみてはいかがでしょうか。

伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」

伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗 著/光文社新書

12月9日は「障がい者の日」。障がいのある人への理解を深め、誰もが生きやすい社会を目指すために制定された日です。この日を機会に手に取りたいのが、伊藤亜紗の『目の見えない人は世界をどう見ているのか』です。この一冊は「見る」という行為を根本から問い直し、人の多様な感覚と生き方に光を当ててくれます。

 

私たちが日々頼っている感覚の約8〜9割は視覚によるものだといわれます。では、その視覚を失ったとき、人は世界をどう感じるのでしょうか。本書では、美学者である著者が、目の見えない人々への取材を通じて、彼らの空間の捉え方や、体の動かし方、言葉の使い方、そして生きるためのユーモアを解き明かしていきます。

 

障がいを「できないこと」ではなく、「違う見方をもつこと」として捉える本書は、読む人の固定観念を静かに揺さぶります。見える人が「平面」で世界を捉えるのに対し、見えない人は「立体的」に世界を感じているという発見には、はっとさせられる人も多いでしょう。視覚障害というテーマを扱いながら、実は「人間とは何か」を考えさせられる哲学の本です。

 

年の終わりに他者の世界を想像し、自分の感覚を見つめ直してみる時間をもってみませんか。『目の見えない人は世界をどう見ているのか』を読んで、世界の見え方を少し広げてみましょう。

あさのあつこ「バッテリー」

あさのあつこ「バッテリー」
『バッテリー』 あさの あつこ 著 KADOKAWA/角川文庫

12月12日は「バッテリーの日」です。野球のピッチャーとキャッチャーの背番号「1」と「2」にちなんで制定されました。バッテリーの日におすすめしたいのが、あさのあつこの『バッテリー』。刊行から30年近く経った今も色あせない名作で、子どもの頃に読んだ人も多いのではないでしょうか。しかし大人になって再び読むと、まったく違う景色が見えてきます。

 

物語の舞台は、岡山の地方都市。天才ピッチャーとしての誇りがある12歳の原田巧と、彼とバッテリーを組みたいと願うキャッチャー志望の永倉豪。2人の間に生まれる信頼と反発、羨望と葛藤――そのぶつかり合いのなかで、少年たちは少しずつ成長していきます。

 

『バッテリー』はかつての情熱や、まっすぐに誰かと向き合う勇気を思い出させてくれる一冊です。子どもの頃に読んだことがある方も、ぜひ再読してみてください。大人になった今だからこそ、主人公のプライドや苛立ちの奥にある不安や優しさが胸に沁みます。

新野剛志「あぽやん」

新野剛志「あぽやん」
『あぽやん』新野剛志 著/文春文庫

12月17日の「飛行機の日」は、1903年にライト兄弟が人類初の動力飛行に成功した日です。空を思う記念日にぴったりなのが、新野剛志の『あぽやん』。華やかに見える空港の裏側で日々奮闘する人々を描いた、爽やかな空港青春物語です。

 

主人公の遠藤慶太は、ツアー会社「大航ツーリスト」の社員。エリート街道を進んでいた彼は、突然の人事異動で成田空港勤務を命じられます。落ち込む遠藤を待っていたのは、予約トラブルやパスポートの不所持、乗り継ぎの混乱など、旅立つ人々のあらゆる想定外のトラブルでした。最初は理不尽だと感じていた仕事も、仲間たちと協力しながらひとつずつ解決していくうちに、慶太は次第に「人の旅を支える」という仕事の本当の意味を知っていきます。「あぽやん」とは空港で働く人々を指す業界用語です。華やかな空港の裏には、旅の安心と笑顔を守るプロフェッショナルたちの努力があります。

 

年末年始の旅シーズンが近づく12月。空港に行く前にこの物語を読めば、カウンターの向こう側にいる人たちの情熱が見えてくるでしょう。デートに行くなら「羽田空港」!おしゃれな人気スポットやカフェなどを紹介

真保裕一「デパートへ行こう」

真保裕一「デパートへ行こう」
『デパートへ行こう!』真保 裕一 著/講談社文庫

12月20日は「デパート開業の日」。日本初のデパート「三越」が誕生したことにちなんで制定された記念日です。きらびやかな売り場や華やかなショーウィンドウの裏には、無数の人の想いや物語が詰まっています。そんなデパートを舞台にした真保裕一の『デパートへ行こう』は、まさにこの日に読みたい一冊です。

 

物語の舞台は、創業100年を迎える老舗百貨店。すべてを失い、かつての思い出をたどるように夜のデパートを中年の男が訪れました。同じ頃、閉店後のデパートに偶然集まったのは人生に行き詰まった人たち。訳ありの店員や、家出中の高校生カップル、落ちぶれた元刑事……。それぞれが抱える孤独や後悔が、静まり返ったデパートの中で交錯していきます。やがて彼らの出会いが思いもよらない奇跡を生み出し、止まっていた時間が少しずつ動き出していくのです。

 

人は誰でも、ふと立ち止まりたくなる夜があります。そんなとき、あたたかな灯りをともしてくれるのが『デパートへ行こう』です。年末の忙しさに追われる12月にこそ、この本を読んで、心をそっと休ませてみてはいかがでしょうか。

tupera tupera「12の星のものがたり」

tupera tupera「12の星のものがたり」
『12の星のものがたり tupera tupera(作・絵)』/Gakken

空気が澄み、星がいちばん美しく見える冬の季節。星々のきれいさに圧倒され、寒さを忘れてしまうくらい天体観測に没頭してしまうなんてこともあるのではないでしょうか。星の美しさに夢中になる時こそ読みたいのが、tupera tuperaの絵本『12の星のものがたり』です。

 

物語の舞台は、神々が天と地上を行き来していたはるか昔のギリシャ。神々は人間と笑い、泣き、怒り、そして恋をしていました。彼らの感情や行動の一つひとつが、やがて夜空に輝く星座として残されます。『12の星のものがたり』はそのような神話をもとに、12の星座にまつわる物語を紹介。切り絵のように美しいイラストと詩のような文章が、読む人を幻想的な世界へと誘います。

 

『12の星のものがたり』を読むと、星座の一つひとつに込められた想いが、夜空を眺める時間を少し特別なものに変えてくれます。子どもに読み聞かせるのはもちろん、大人が静かな夜にページをめくるのにもぴったりです。

 

寒い冬の夜、あたたかい飲み物を手にこの本を開いてみてください。星座に込められたそれぞれの物語を読みながら、星々に思いを馳せる。そんな格別なひとときを過ごしてはいかがでしょうか。東京でもきれいに見える星スポット特集&最新プラネタリウム特集!寒い冬にロマンチックな星空デートを♪

12月におすすめの読書法3選

慌ただしい日々が続く12月。年の瀬がせまりついつい気が急いでしまいがちなこの時期ですが、そんな時こそ立ち止まってゆっくり読書をしてみませんか。ここでは12月におすすめの読書法を3つご紹介します。

満天の星空のもとで読書

満点の冬の星空

 

澄んだ空気の中、夜空を見上げていると、思わず深呼吸したくなるような静けさに包まれます。そんな空間で満天の星を眺めながら、あったかいブランケットにくるまって本を読むのも12月ならではの特別な読書時間。肌に沁みる空気の冷たさも、冬だけの感覚と思うとどこか愛しく思えてくるかもしれません。ホットドリンクで温まりながら、冬の夜空と本の世界をゆっくり味わってみませんか?くれぐれも風邪を引かないよう、防寒対策は万全に!いつものココアやコーンポタージュが贅沢な味わいに。スパイスを使ったドリンクレシピ5選

ゆずの香りを堪能しながら読書

日光に当たる複数のゆず

 

12月といえば、一年で最も日が短くなる“冬至”に入りたくなるゆず湯も欠かせませんよね。湯気に広がるゆずのやさしい香りに包まれながら本を楽しむのもまた格別。ほんのりと漂う爽やかな香りは、自然と気持ちをほぐしてくれて、物語の世界へするりと入りやすくしてくれるでしょう。忙しさが続く12月の中で、読書×温浴でそっと自分を労われば、心の余白が生まれるはず。冬至ならではの“香りと温もりの読書”、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。【2024年】冬至はゆず風呂に入ろう!正しい方法や注意点・得られる効果まで気になるポイントを解説

新年が明けるのを待ちながら読書

暖炉のそばのソファでくつろいで本を読む人

 

12月31日、一年の終わりから新しい年へ切り替わる特別な夜。街の喧騒も落ち着いて、ゆっくりと時間が流れていくあの瞬間は、読書にぴったりの静けさといえます。カウントダウンを待ちながらページをめくると、物語の余韻と年越しの雰囲気に包まれて、とても穏やかな気持ちに。区切りの夜に読む一冊は、どこか“今年を振り返り、来年へ気持ちを整える”ような役割も担ってくれます。慌ただしい12月の終わりに、しんと澄んだ時間を味わうような年越し読書。静かに迎える新年も、また素敵ですよね。おしるこの簡単アレンジ!ちょい足しするだけ&お手軽リメイク方法を紹介

おわりに

本とキャンドル 12月イメージ

 

12月は忙しいようで、ふとした瞬間に静けさがあったりと、どこか読書がしっくりくる季節といえるのではないでしょうか。季節の変化を楽しみながら読む時間は、ほんの少し気持ちをリセットして、自分のペースを取り戻せるいいきっかけにもなるはず。年の終わりの慌ただしさの中でも、一度腰を落ち着けて本を開くひとときを楽しんでみてくださいね。2024年【12月におすすめの本】1年を締めくくる1冊を。寒い冬ならではの読書法も紹介♪おみくじはいつどのように捨てればいい?正しい捨て方・返納方法を解説|初詣やパワースポット巡りに!

あまち

written by...あまち

2022年よりフリーランスとして活動中のWebライター。現在は2児の母として育児と仕事を両立に奮闘中。趣味は家族とのレジャーや、カフェで過ごすひととき。